ひまじんのいまじん(仮)

息抜きに呟いています。テーマが一貫していません。最近は思考の断片の記録と化しています。

『こわれてしまった一日』 / 友部正人

あなたの事をこう呼びましょう 遠くからでも見える人
夜の夜中にやってきて そうして笑って僕を見ている
僕は夜明けを待つ患者です 胸には名札を付けています
ここは窓の無い部屋なのに あなたはどこからやって来たの


ひっそりとした夜の町は エンジンを切ったオートバイ
それとも誰かがふたを開けて 弾くのを待っているピアノ
御徒町のプラットホームに 一番列車が来る前に
水飲み場という月夜のピアノで ハラハラ夜明けを奏でてよ


どこかの国が打ち上げた グランドピアノの人工衛星
地球の裏側のジャングルで ふたを開けて笑うオルガン
馬小屋でキリストが生まれた夜に 三人の男がやって来た
馬小屋にあったというピアノで 新しい夜明けを奏でるために


時間の止まった世界の中を あなたはカラコロ歩きまわる
夜明けを一時間だけ行き過ぎて 夜のままで止まった世界を
世界中の時計を一時間戻し あなたはベッドにもぐりこむ
おやすみ こわれてしまった一日と 遠くからでも見える人